遺伝子組み換えの是非[1/2]

March Against Monsanto Vancouver  Photo by Rosalee Yagihara

遺伝子組み換えの是非に関する5つの質問に対する回答( GMO vs Non-GMO: 5 Questions Answered )という記事が、米国有数の健康情報サイトである Healthline に掲載されました。

我々の食料供給に関係する遺伝子組み換え問題は、現在進行中の(ongoing)、微妙な(nuanced)、非常に議論の別れる(highly contentious)問題(issue)である。

科学界や医学界の人たちは論争の両サイドに立ち、遺伝子組み換え農作物は飢餓と増大する地球人口問題を解決するのに役立つと主張する人たちもいれば、環境にも人間にも利益以上に害をもたらす(doing more harm than good)と信ずる人たちもいる。

双方の立場を支持する多くの研究がある。我々はどちらを信用すればよいのか?

遺伝子組み換え問題に関わる論点の意味(sense)をより明らかにするため、大きく異なったサイドに立つ二人から、それぞれの専門的な意見(professional opinions)を求めた。

これがこの記事の由来です。今回は「意見」の紹介ですので、情報の要約ではなく、二人の回答の全文を訳出することにしました。

反対派は、脳の健康に関するベストセラー、「いつものパンがあなたを殺す」や「腸の力であなたは変わる」の著者として有名な神経学者の Dr. David Perlmutter
賛成派の Dr. Sarah Evanega は植物生物学者で Cornell Alliance for Science の所長(director)です。

この記事では触れられていない論点で重要と思われる情報は、続編で紹介する予定です。

遺伝子組み換え食品に対する立場は?

What is your stance on GMO food?

Dr. David Perlmutter

遺伝子を組み換えた農作物の種子は、地球およびその住人の利益にならない。遺伝子を組み換えた農作物は、環境と人間に対して毒性のある、グリホサート《グリホサートについては下記解説をご参照ください》のような化学物質の使用の増大と関係している
Glyphosate, pathways to modern diseases IV: cancer and related pathologies
これらの化学物質は、我々の食料と飲料水供給を汚染するだけでなく、土壌の質を損ない、農作物が病気に感染しやすくなることに実際に関係している。
How glyphosate affects plant disease development: it is more than enhanced susceptibility.

これは、結局のところ、農薬使用の増大と、生態系のさらなる破壊をもたらす。これらの難点にもかかわらず、遺伝子組み換え作物の収量増大は、それが遺伝子組み換え種子がもたらす見込みの一つであったにもかかわらず、いまだこれを目にしていない。
Sustainability and innovation in staple crop production in the US Midwest

幸いなことに、食糧不足という問題に対して、遺伝子組み換え農作物に頼らない、革新的な選択肢が存在する。

[解説:グリホサート]グリホサートは、モンサント社(2018年6月にバイエル社により買収)の除草剤ラウンドアップの有効成分です。モンサント社はラウンドアップ(グリホサート)に対して耐性を持つように遺伝子的組み換えを行った(したがってラウンドアップが使用できる)除草剤耐性農作物の種子を販売しています。
モンサント社のラウンドアップに関しては別稿 除草剤と遺伝子組み換え作物 でも詳しく取り上げています。

Dr. Sarah Evanega

遺伝子組み換え食品は安全である。この点で、私の立場は、米国科学アカデミー(National Academies of Sciences)および世界の科学界の大多数の見解を反映している。
Genetically Engineered Crops Experiences and Prospects (2016)

私は、3人の子供達ともども、遺伝子組み換え食品を食している。これらの食品が安全であると確信しているからである。
私は、遺伝子組み換え作物が、発展途上国の小自作農の貧困と飢餓を軽減するのに役立つことができると確信しているので、遺伝子組み換え食物を支持している。それらはまた、概して、農業による環境への影響を減少させることができる。

遺伝子組み換え技術は、水不足、病気、害虫に耐える農作物を生み出すことを支援するツールである。それは、農家の人たちが、その家族を養うために栽培している農作物の収量を増加させ、追加収入を得ることを意味する。
我々は、アフリカや南アジア、東アジアで、遺伝子組み換え作物を栽培する農家の人たちが、追加収入を得て、子供たちを学校に通わせたり、プロパンコンロを買ってもはや牛糞を燃やして調理をする必要がなくなったりという、我々欧米人には当たり前のことをするようになるのを幾度となく見てきた。 

発展途上国において、雑草取りの作業の多くは女性と子供によって担われている。除草剤に耐性のある農作物を栽培することによって、子供たちは解放されて学校に行くようになり、女性たちは家族を支える収入を得る時間が持てるようになる。

私は、改良された農作物を作り出すのに遺伝子組み換え技術を使っている多くの科学者を知っており、世界をよりよい場所にするための彼らの献身に立ち会ってきた。遺伝子組み換え食物が人々の生活をいかによくすることができるかを直接見てきたがゆえに、私は遺伝子組み換え食物を支持する。農業従事者たちにとって、遺伝子組み換えを利用できることは、社会的および環境的正義の問題なのである。

遺伝子組み換え食品は、遺伝子組み換えでない食品に較べて、健康的でない?なぜか?あるいはなぜそうではないか? 

Is GMO really less healthy than non-GMO food? Why or why not?

Dr. David Perlmutter

遺伝子組み換え作物に大量に使われている毒性のある様々な除草剤は、破壊的な影響があることは疑いない。遺伝子組み換え食品とそうでない食品との栄養価の比較に関しては、ミネラル含有量は、土壌に存在する様々な微生物に、かなりの度合いで依存していることを理解することが重要である。
遺伝子組み換え作物に多くあることであるが、土壌にグリホサートが散布されると、それは殺菌作用を引き起こし、植物からミネラルを吸収する能力を奪ってしまう。 

だが公平のために言っておくと、ビタミンとミネラルに関して、科学文献は、遺伝子組み換えとそうでない農作物の栄養価に劇的な違いがあることを示してはいない。

しかし今や、グリホサートにさらされることに関して健康上のリスクがあるという十分な裏付けがある。世界保健機構は、グリホサートを「おそらくヒトに対して発ガン性がある」と特徴付けている。
World Health Organization Labels Glyphosate Probable Carcinogen
これは、巨大アグリビジネスが、我々に理解させたくないどころか気付かせたくすらない汚れた真実だ。
その一方で、この高い毒性のある化学物質が、世界中で、16億kg以上使用されていると推定されている。《kgはpoundsの誤記と思われます。下記参照文献では「747 million kg (1.65 billion pounds)」》
Trends in glyphosate herbicide use in the United States and globally
はっきり言って、遺伝子組み換えによって除草剤に耐性のある農作物が、世界のグリホサートの使用量の50%以上の割合を占めているのだ。

Dr. Sarah Evanega

健康という視点からは、遺伝子組み換え食品はそうでない食品と変わるところはない。遺伝子を組み換えることができてアフラトキシン(aflatoxin)のレベルを減少させたピーナッツや、
Genetic engineering solves major toxin problem in peanuts
グルテンフリーの小麦を想像してみてください。
CRISPR could bring science closer to the consumer
グルテンフリーの小麦により、セリアック病の人たちが健康でおいしいパンを選ぶことができる。遺伝子組み換えトウモロコシは、天然に存在するマイコトキシンの量を3分の1減少させた。
GMO maize safer than non-GMO alternative, scientists conclude
マイコトキシンは、健康上の問題と経済的損失の両方を引き起こす。

ビタミンAを強化したGolden Riceのような遺伝子組み換え食品は、 ビタミンやミネラルを強化してより健康的な主食を生み出し、栄養障害を防ぐのに役立つ。
Golden Rice Project

虫害抵抗性や乾燥耐性などの特性を持つように農作物を操作するプロセスは、一般には、食品の栄養価に影響を与えるところは皆無である。虫害抵抗性のあるBt 遺伝子移植農作物(Bacillus thuringiensis (Bt) crops:バチルス・チューリンゲンシス(Bt)作物 )《Bt 遺伝子移植農作物については下記解説をご参照ください》は、実際に殺虫剤を使用する必要性を無くすか少なくする。これはその食品の健康性と安全性をさらに改善する。
Bacillus thuringiensis; A genomics and proteomics perspective

バングラデシュにおいて、農家の人たちはナスの栽培で収穫直前まで殺虫剤を噴霧しており、これは彼らが多量の殺虫剤を浴び、また消費者は多量の残留殺虫剤を摂っていたことを意味する。しかし、虫害抵抗性のあるBtナスを栽培するようになってから、殺虫剤の使用を大幅に減らすことができるようになった。これは、遺伝子組み換え農作物が、農家の人たちにとってのみならず、消費者にとっても健康的であることを意味する。
Farmers’ Perspectives: Bt Brinjal in Bangladesh

同様に、新しい、病害抵抗性のある遺伝子組み換えジャガイモは、防かび剤を最大90%減らすことができることを研究が示している。
GMO potato can reduce fungicide use by 90 percent
この場合も、確かにジャガイモがより健康的になる。有機栽培農家でさえ殺虫剤を使っているのだから。

私は、人々が、パンやクッキーなどの焼いた食品、朝食のシリアル、チップ類、その他のスナック類やインスタント食品類のような、加工度の高い食品に対して、もっともな懸念を持っていることを理解している。これらの食品は、たいてい、トウモロコシ、大豆、甜菜《砂糖の原料》やその他の、遺伝子組み換え農作物を原料としている。しかし、果物、野菜、穀類などのような自然食品(whole foods)に較べて、これらの加工食品を健康的でないようにしているのは、製造プロセスである。原料の起源は無関係である。

[解説:Bt 遺伝子移植農作物]Bt 遺伝子移植農作物とは、土壌細菌であるバチルス・チューリンゲンシスのBt 遺伝子を導入した遺伝子組み換え作物です。Bt作物という呼び方もされます。Bt 遺伝子から作られるタンパク質は特定の種類の昆虫に対して殺虫作用を示すので、虫害抵抗性のある農作物となります。トウモロコシ、ジャガイモ、ワタなどにこの品種があります。バチルス・チューリンゲンシス菌を利用したBt 殺虫剤は米国ではすでに30年以上使用されてきましたが、Bt 遺伝子移植農作物は、その殺菌作用を内部で生成させることによって、Bt 殺虫剤の散布を減らすか不要にしようというものです。》

遺伝子組み換え食品は、環境衛生に影響を与える。なぜか?あるいはなぜそうではないか?

Does GMO food affect the health of the environment? Why or why not?

Dr. David Perlmutter

影響を与えるのは疑いない。我々の生態系はバランスを保って働くよう進化してきた。グリホサートのような有害な化学物質が生態系に導入された場合はいつも、我々の環境を健康に保つ自然のプロセスが破壊される。

2015年の米国農務省のデータによれば、85%の農作物に残留農薬があると報告している。
Pesticide Data Program Annual Summary, Calendar Year 2015
地下水の農薬レベルを調べた他の研究によれば、サンプリングサイトの53%において、1種類以上の農薬が含まれていたと報告している。
Pesticides in Groundwater of the United States: Decadal‐Scale Changes, 1993–2011
これらの化学物質は、我々の水や食べ物を汚染するだけでなく、周辺環境に生息する他の生命体を養う資源も汚染する。遺伝子組み換え種子が今や世界のグリホサート使用量の50%以上を占めるという事実が関係しているのは確実だ。

しかしより重要かもしれないのは、これらの化学物質が土壌中の微生物叢を害していることである。《参照文献表題中は「Ⅱ」となっていますが、下記の「Ⅵ」の誤記と思われます。》
Glyphosate pathways to modern diseases VI: Prions, amyloidosis and autoimmune neurological diseases
我々は、土壌中に生息する種々の生命体が、植物を守り、病気に対してより抵抗力を高める働きをしていることを認識し始めたばかりである。これらの化学物質の使用によって、保護の働きをする生命体を破壊することは、植物が持っている自然の防護メカニズムを弱め、その結果として、より多量の殺虫剤や他の化学物質を必要とするようになるであろう。
Impacts of genetically engineered crops on pesticide use in the U.S. — the first sixteen years

我々は今や、動物と同様に植物も、自律的な存在ではなく、多様な微生物と共生関係にあることを認識している。植物は、その健康と病気に対する抵抗力を、土壌中の微生物に死活的に依存しているのである。

上記の最後の参照文献は”衝撃的な”調査結果を示していますので、その要約にも依りながら骨子を紹介します。

除草剤耐性(Herbicide-tolerant)農作物とBt 遺伝子移植(Bt-transgenic)農作物(虫害抵抗性がある)は、米国農業において大勢を占めており(収穫農地面積の約半分)、大豆栽培面積の約95%、トウモロコシの栽培面積の約85%が該当する。

除草剤耐性農作物は最初の数年はたいへんうまく行くが、除草剤に対して耐性のある雑草が現れてきて、今や2ダース以上の種類のグリホサート耐性を持つ雑草が存在する。それに対処するため、除草剤の使用頻度と使用量の増大、グリホサートよりも毒性の強い他の除草剤(2,4-D や dicamba)との併用を余儀なくされている。1996年から2011年の16年間で、除草剤耐性農作物に使用される除草剤の総量は、23万9千トン増加した。これに伴って雑草対策に要する費用も増大している。

Bt 遺伝子移植農作物は、殺虫剤の使用量を5万6千トン減少させた。しかし、Bt 遺伝子移植農作物で生成される栽培面積あたりのエンドトキシン(内毒素)の量は、Bt 遺伝子移植でない通常の農作物に散布される標準的なBt 殺虫剤の毒性物質の量をはるかに超えている。さらに、散布されたBt 殺虫剤の毒性物質は植物組織の表面にあるため、日光や降雨で速やかにブレークダウンされるが、Bt 遺伝子移植農作物で生成される内毒素は植物組織内部に存在するため、殺虫のターゲットとしていない生物種やその植物を摂る人間や動物に大きな影響を与える可能性がある。

Dr. Sarah Evanega

遺伝子組み換えは、環境衛生にプラスの影響を与えている。20年間のデータのメタアナリシスによれば、米国における虫害抵抗性のある遺伝子組み換えトウモロコシの栽培は、殺虫剤の使用を著しく減少させた。
Impact of genetically engineered maize on agronomic, environmental and toxicological traits: a meta-analysis of 21 years of field data
また、損害を与える害虫の個体数が抑えられることによって、遺伝子組み換えでないオーガニックの野菜を栽培する農家の人たちが、殺虫剤の使用を減らすことが可能になるというハロー《後光》効果を生み出した。
GMO crops create “halo effect” that benefits organic farmers, says new research

我々はまた、遺伝子組み換え技術を使って、自分自身で窒素を産生したり、乾燥条件下でも生育できたり、虫害抵抗性を持つ農作物を作り出すのを見てきた。これらの農作物は、肥料、殺虫剤、水の使用量を減らすことで直接的に環境衛生に利益をもたらす。
Scientific innovations solving agricultural problems
他の研究者たちは、光合成の速度を加速する研究に従事している。これは、農作物が早く成熟することができ、したがって収量を改善し、新しい土地を耕作する必要性を減らし、その土地を保護や他の目的のために取っておけることを意味する。

遺伝子組み換え技術は、食品廃棄物とそれに関連する環境上の影響を低減するのに使うことができる。例として、褐色化しないマッシュルーム、リンゴ、ジャガイモがあげられるが、より傷みやすい果物にも応用することができるだろう。リン成分の産生量の少ない豚のような、遺伝子組み換え動物に関しても非常に大きな可能性を有している。
A new gene-edited mushroom is changing the dialogue around GMOs

遺伝子組み換え食品は、世界の総人口を養うために必要か?なぜが?あるいはなぜそうではないか?

Is GMO food necessary to feed the entire world population? Why or why not?

Dr. David Perlmutter

世界の人口全部を養うために遺伝子組み換え食品が必要であるという議論はまったくばかげている。遺伝子組み換え農作物は、商業化されている主たる食料源のいずれにおいても、その収量を実際には増加させていないというのが現状である。
Sustainability and innovation in staple crop production in the US Midwest
事実、最も広く栽培されている遺伝子組み換え作物である大豆においては、その収量が減少している。遺伝子組み換え作物において収量が増加するという見込みは、我々が実現できていないものの一つである。

食料確保に関してもう一つ考えるべき重要なことは、無駄を減らすことである。米国においては、食品の廃棄は40%という驚異的なレベルに迫ると推定されている。
How much food waste is there in the United States and why does it matter? USDA
Dr. Sanjay Guptaのような優れた健康評論家たちはこの問題について発言しており、食料不足問題に対処するための鍵を握る重要な要素として食品廃棄を強調している。サプライチェーンから無駄な廃棄を削減することが、全体として生産する必要のある食料の量を減らす大きなチャンスであることは間違いない。

Dr. Sarah Evanega 

世界の人口は2050年には97億人に達すると予期されており、1万年の農耕の歴史全体のなかで、農業従事者は今、もっとも多くの食料を生産することを求められている。同時に我々は、長期間の干魃や激しい暴風雨のような極度の気候変動に直面している。これは農業生産に多大の影響を与える。

その一方で、我々は、炭素排出量、水質汚染、土地の浸食、他の農耕に関係する環境的な影響を低減する必要がある。また、他の生物種が生息するのに必要な野生地に食料生産を拡大するのは避けなければならない。

このようなとてつもない難題に、旧来の農作物の育種法で立ち向かえると期待することはできない。遺伝子組み換え技術は、収量を増大し、農業による環境負荷を軽減する手段のひとつを提供する。それは特効薬ではないが、従来の方法よりも早く、改良された植物を開発できるので、植物育種家が使える重要な手段である。また、従来の育種法では改良が非常に困難であったバナナのような重要な食用農作物を改良するのに役立つ。

我々は確かに、食品廃棄物を減らし、また世界的規模で食品の流通・貯蔵システムを改善することにより、より多くの人を養うことができる。しかし、農作物と家畜双方の生産性と品質を改善するのに多くのことがなせる遺伝子組み換え技術のような重要な手段を無視する余裕はない。

我々が今日において直面している社会的および環境的諸問題は、その量と範囲ともに前代未聞である。環境に配慮しながら世界の人口を養うという課題に対処するために、我々は持てるかぎりの手段を使う必要がある。遺伝子組み換えはその一翼を担うことができる。

遺伝子組み換え食品に対する実行可能な代替手段はあるか?もしそうならそれは何か?

Is there a viable alternative to GMO food? If so, what is it?

Dr. David Perlmutter

間違いなくある。食糧不足の問題を持続可能な形で解決しようと取り組んでいる多くのイノベーターがいる。焦点となる分野のひとつは、サプライチェーンでの無駄を減らすことである。例えば、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの資金調達を得た Apeel Sciences という企業は、植物の残った皮と茎を原料にして、天然のコーティングを開発した。それは製品にスプレーすることによって形成され、その熟成過程を遅らせ、保存期間を長くする。消費者もスーパーマーケットも、食品廃棄物を減らすのに役立つ。

それに加えて、先進的な考えを持つ研究者たちは、植物やその近傍に生息する微生物が、植物の健康のみならず、それがつくり出す栄養素の質や量を増強するためにどのように機能しているかという研究に、現在、深く関わっている。The Scientistに掲載された最近の論文で、英国の農業研究者 Davide Bulgarelliは、「科学者たちは、持続可能な形で農作物の生産高を増加させるために、土壌中の微生物をコントロールしようと試みている。植物の微生物叢に対する新たな洞察が、今や、そのような農業戦術の開発を促進しつつある。」
How Manipulating the Plant Microbiome Could Improve Agriculture
Tiny Microbes, Big Yields: enhancing food crop production with biological solutions

微生物がいかに植物に恩恵を与えているかという研究は、微生物とヒトの健康を関係づける同様な研究と調和している。したがって、他の代替手段は、微生物と植物との有益な相互作用を利用し、それを十分に活用しながら、より健康的で生産的な農業を生み出していくことである。

Dr. Sarah Evanega

科学的、環境的、あるいは健康という視点から、遺伝子組み換え食品の代替手段を探し求める理由は存在しない。しかし、もし人が遺伝子組み換え食品を避けようと望むなら、オーガニック製品を購入することができる。オーガニック認証は、遺伝子組み換え技術の使用を許していない。
Organic 101: Can GMOs Be Used in Organic Products? USD
しかしながら、消費者は、かなり重い、環境および経済コストを伴うことに注意しておく必要がある。

米国農務省の最近の研究によれば、オーガニック食品はオーガニックでない食品に較べて、少なくとも20%高額である。特定の製品や地域によってはより高くなることもある。
Investigating Retail Price Premiums for Organic Foods
これは、一定の予算内で生活している家族にとっては大きな差である。特に、オーガニック食品がそうでない食品よりも健康的なところは何もなく、両者とも、含まれる残留農薬が、通常は、連邦安全指針(federal safety guidelines)を十分下回ることを考えれば。《連邦安全指針(federal safety guidlines)が何を指しているか不明です。EPA(環境保護庁)のTest Guidelines for Pesticides and Toxic Substancesのことでしょうか?そこで tolerancesという名称(他の国ではmaximum residue limits:MRLsと呼ぶ)で残留農薬の基準値を設定しています。》

オーガニック農作物は、オーガニックでない農作物、あるいは遺伝子組み換え農作物に較べて、一般に生産性が低く、より耕耘を必要とするので、環境上の損失がある。オーガニック農作物はまた、動物由来の肥料を使うが、それらの動物には餌と水が必要であり、その排泄物中にメタンガスを発生する。リンゴを例に取ると、オーガニックの栽培者が使う「天然の」殺虫剤は、オーガニックでない栽培者が使う殺虫剤よりも、ヒトと環境に対してはるかに毒性が高い場合もある。

植物育種の観点から言えば、遺伝子組み換えによって可能な改良のいくつかは、従来の方法では全く実現できない。繰り返すが、遺伝子組み換え技術は、植物育種家に、農業に対して健康で環境に負担の少ない取り組みをもたらすことのできる重要な方法を提供する。増大しつつある世界人口を支える食料を生産するということにおいて、遺伝子組み換え技術を避ける科学的な理由は全くない。