グラフは 日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン より転載
国立がん研究センターの最新がん統計(2014年データに基づく)によれば、日本人女性が生涯で乳ガンに罹患する確率は9%(11人に1人)、生涯で乳ガンにより死亡する確率は2%(67人に1人)です。
また、トップのグラフが示すように、日本人女性の乳ガン罹患率は年を追って増加しています。(1975年から2010年の35年間で約4倍、しかも増加率が年を追う毎に高くなっています。)
機能性医学(Functional Medicine)を実践している著名な医師であり、ベストセラーとなっている著書も数多い Dr. Mark Hyman が、そのメールマガジンで、乳ガンのリスクを下げるライフスタイルについて2回にわたり(パート1とパート2)紹介しています。原題は Nutrition for Breast Cancer Awareness[直訳すると「乳ガンを意識した栄養学」]ですが、内容はライフスタイル全般にわたっています。
目次
パート1:最も強力で容易なライフスタイルチェンジ
米国では、8人中1人の女性が、その生涯において乳がんに罹患している。U.S. Breast Cancer Statistics
乳ガンが米国女性に最も多く見られるガンであることを考えると、予防の価値を認識すること、回復過程にある人たちの癒やしをどうサポートするかを理解すること、将来的な再発を防止すること、は極めて重要である。
食べているもの(What we eat)、環境有害物質(environmental toxins)、慢性的ストレス(chronic stress)、睡眠不足(sleep deprivation)、その他の現代社会の諸問題(ther problems in modern-day society)が、乳ガンのリスクを増大させている。遺伝的特性が銃に弾を込める。しかし引き金を引くのは[これらの諸問題が織りなす]環境である。乳ガンの家族歴があったとしても望みはある。医師が憂鬱になることを告げたとしても、乳ガンを回復に向かわせる手立ては用意されている。
私は機能性医学(Functional Medicine)によるアプローチを取っている。それは乳ガンのリスクを増大させる要因を検討し、それを取り除こうとするものである。この観点からすれば、ガンが成長する土壌を文字通り変えることができる(you can literally change the soil in which cancer grows)。
我々自身の細胞の土壌を浄化して(clean up your own cellular soil)、ガンのリスクを減らしたり治癒過程を促進するもっとも強力な方法のひとつは、糖類(sugar)を[食事から]取り除くことである。
糖類を摂取するたびに、インシュリン[の分泌]が増加する。それはガン細胞の増殖と炎症(cancer cell growth and inflammation)とにリンクしている。
Breast Cancer Risk in Metabolically Healthy but Overweight Postmenopausal Women
上記論文の表題からは、「インシュリン分泌の増加はガン細胞の増殖と炎症にリンクしている」ことは見えにくいかもしれませんので、この論文の骨子をそのAbstractから整理しておきます。
① 肥満が閉経後の乳ガンのリスク要因であることは実証されている。
② インシュリンの細胞分裂/抗アポトーシス活性(mitogenic/antiapoptotic activity)に起因して、肥満の女性がインシュリンレベルが高いことが①の関係(肥満が乳ガンのリスク要因であること)で主たる役割を果たしている可能性があることを最近のデータは示唆している。
③ しかしながら、肥満の女性でもインシュリン感受性(insulin sensitivity)が正常な場合に、乳ガンのリスクが高いかどうかは知られていなかった[のでそれを調べたというのがこの論文の趣旨です]。
結果は、
④ インシュリン感受性が正常な場合は、肥満の女性の乳ガンのリスクは正常体重の女性のリスクに較べて増加しない。
⑤ インシュリン感受性が異常な場合[インシュリン抵抗性がある⇒インシュリンレベルが高い]は、正常体重の女性でも乳ガンのリスクが増加する。
というものです。
また、この論文の参考文献[6]は、インシュリンと乳ガンの進行との関係を示唆するものです。
インシュリンが増えると、我々の体は脂肪を蓄積しやすくなる。過剰な体脂肪が乳ガンのリスクを増大させることも示されている。
Overweight, obesity, oxidative stress and the risk of breast cancer.
ここで問題としている糖類(sugar)は、通常我々が食事や飲料で摂取する糖類、すなわち単糖類であるブドウ糖と果糖、および二糖類である砂糖と考えられます。砂糖はブドウ糖と果糖が結合したものです。最近は「ぶどう糖果糖液糖」と表示された異性化糖が、清涼飲料・パン・缶詰・乳製品などで、砂糖と同様に大量に使われています。
これらの糖類を摂取すると、ブドウ糖が速やかに吸収されて血中のブドウ糖濃度を上昇させ、それに誘発されてインシュリン濃度が上昇します。
Dr. Hymanが問題にしているのはこのインシュリン濃度の上昇なのですが、これをもたらすのは糖類だけではありません。
穀類の主成分であるデンプンはブドウ糖が多数結合した多糖類ですが、これもブドウ糖に分解されて吸収されます。精製された形態の穀類はこの吸収が早く、糖類と同様の血中ブドウ糖濃度の上昇をもたらします。その程度を示す指標が、よく知られているグリセミックインデックス(GI)です。
したがって、Dr. Hymanの論点から言えば、糖類だけでなく、デンプンなども含む糖質(糖類は糖質に含まれます)を問題にすべきでしょう。Dr. Hymanも他のところで、「デンプンと砂糖(starch and sugar)」の比率が高い現在の米国の食事(おそらく日本も)が問題だと繰り返し述べています。
南雲吉則著『大切な人をがんから守ため今できること 命の食事』(主婦の友社 )では、今すぐ止めるべき「がんが喜ぶ狂った食事」として第一に取り上げているのが「精製した糖質」ですが、その具体例として挙げているのは、白米、パン、めん、小麦粉と砂糖で作った菓子、じゃがいも です。
関連記事 糖類摂取の問題[1/2]
私の患者さんには、糖類と加工食品(sugar and processed foods)を共に断ち切るよう勧めている。そして色取り取りの植物性食物(colorful array of plant foods)が豊富な、栄養たっぷりの食事(nutrient-dense diet)を勧めているのはもちろんだ。それによって、たくさんの抗酸化物質とフィトケミカル(plenty of antioxidants and phytochemicals)を味方につけることができる。
ここでいう「加工食品」とは、砂糖、望ましくない油脂類(トランス脂肪酸や過剰なオメガ6脂肪酸)や、保存料、安定剤、人工着色料、人工香料、人工甘味料のような合成食品添加物を多量に含む食品、いわゆる大量生産されたパッケージ入りの食品のことと考えていいでしょう。
関連記事 加工食品の摂取とガンとの関係について
関連記事 人工甘味料の問題
先に触れた南雲吉則著『大切な人をがんから守ため今できること 命の食事』では、「がんが喜ぶ狂った食事」の2番目に「悪い油(トランス脂肪酸とオメガ6のサラダ油)」、3番目に「化学調味料、人工甘味料、保存料、着色料、香料などの食品添加物」を挙げています。
「色取り取りの植物性食物」を摂る食事法は「Rainbow Diet」と呼ばれています。野菜や果物の固有の色は、それらに含まれる種々のビタミンやフィトケミカルに由来します。様々な色の野菜や果物を摂れば、様々な種類のビタミンやフィトケミカルを摂取することになり、総合的な健康上の効果を期待できるとするものです。
How Eating a Rainbow Diet Helps Prevent Cancer
「フィトケミカル(Phytochemicals)」とは、元来は植物中に存在する化合物を意味しますが、一般には、植物に含まれている、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、食物繊維のような主要栄養素以外の、健康維持・増進に役立つ作用を持つと想定される物質を指す用語として使われています。ビタミン、ミネラルの一部を含めることもあります。多くは抗酸化作用を持ちます。
Phytochemicals
パート2: 体内の重要なシステムのアンバランスに取り組む8つの方策
パート1では、糖類を食事から取り除くという、最も強力で容易なライフスタイルチェンジを紹介したが、パート2では、それに加えて、体内の重要なシステムのアンバランス(imbalances in key systems within the body)に取り組む8つの方策を紹介する。これらは、乳ガンだけでなく、他の疾患にも有効である。
従来の医療(Conventional medicine)は、乳ガンを予防したり回復させ、減量を達成し、豊かな健康状態を生み出す、シンプルだが力強い効果のある方法をしばしば見過ごしている(oftentimes overlooks)。私は、自分の診療経験の中で、これら8つの方策が信じられないほど頼りになるのを見てきている。
1.食物繊維の摂取を増やす
食物繊維(fiber)は腸にとって重要であり、それがゆえに我々の健康全体にとっても重要である。目標は1日あたり35gの摂取。食物繊維が多いのは、野菜類、果物類、豆類、ナッツ類、玄米のような全粒穀類などである。
食物繊維は、腸内の有用な細菌を選択的に増殖させ、有害な細菌の増殖を抑制するプレバイオティクス(prebiotics)として働きます。
食物繊維を1日35gというのは相当の量です。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)によれば、1日あたりの食物繊維摂取の目標値は、18歳から69歳の男性で20g以上、同女性で18g以上となっていますが、多くの方が厚生労働省のこの目標値すら満たしていないかもしれません。
2.食事ごとにタンパク質と脂質を摂る
魚、肉、鶏、卵などが良質のタンパク質源である。ナッツ類、種子類、豆類は、[動物性のものに較べてタンパク質の含有量は少ないが]植物性のタンパク質源であり、多くは健康に良い脂質(healthy fats)を含んでいる。これらタンパク質と脂質の二つの主要栄養素は双方とも、炭水化物摂取の血糖値上昇作用をバランスさせるのに重要である。また、タンパク質と脂質は、体にとって、再合成や修復に必須である。脂質はまた、強力な免疫システム(およびその他の重要な機能)に必要とされる脂溶性ビタミンA、D、E、Kの吸収を促進する。
ここでの「健康に良い脂質(healthy fats)」とは、オメガ3脂肪酸のことを指していると思われます。[オレイン酸も含めて考えているかもしれませんが、この文脈では判断できません。]
多価不飽和脂肪酸は、その二重結合の位置によってオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸に分類されます。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸はどちらも必須脂肪酸なのですが、単純化していうとオメガ3脂肪酸が炎症を抑制し、オメガ6脂肪酸が炎症を昂進する働きがあります。したがってその摂取バランスが重要なのですが、現代の食生活ではオメガ6脂肪酸の比率が圧倒的に高くなっています。その理由は、オメガ6脂肪酸を多く含む食用油(テンプラ油、サラダオイルなど)や食品などを大量に消費していることと、もともと少ないオメガ3脂肪酸を含む食材をあまり食べなくなっていることでしょう。
体が炎症性に傾くのを防ぐには、オメガ6脂肪酸を多く含む食用油や食品を極力控え、オメガ3脂肪酸の比率の高い食品を摂取することが有効であると言われています。(普通に野菜類や豆類を食べていれば、十分な量のオメガ6脂肪酸が摂取できます。)
オメガ3脂肪酸には亜麻仁油やエゴマ油、クルミなどに多く含まれるαリノレン酸、青魚などに含まれるEPAとDHAなどがあります。オメガ6脂肪酸の代表的なものはリノール酸で紅花油、大豆油、コーン油などに多く含まれます。
多価不飽和脂肪酸以外の油として、オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)、ココナッツオイルに多く含まれる中鎖飽和脂肪酸などがあります。
3.炎症を抑制する栄養補助
炎症を抑制する(controlling inflammation)ために、少なくとも、フィッシュオイル(fish oil)と、良質のマルチミネラルビタミン(multivitamin/ mineral)を摂りたい。炎症を抑制することは、ガンの治癒や、他の健康でない状態(state of dis-ease)になるのを防ぐ根幹である。
The effects of EPA and DHA enriched fish oil on nutritional and immunological markers of treatment naïve breast cancer patients: a randomized double-blind controlled trial
「フィッシュオイル」は、魚などから抽出したオメガ3脂肪酸であるEPAやDHAを含む製剤を指しています。先に「体が炎症性に傾くのを防ぐには、オメガ6脂肪酸を多く含む食用油や食品を極力控え、オメガ3脂肪酸の比率の高い食品を摂取することが有効である」と書きましたが、それでは十分でない場合が多いので、EPA・DHA製剤の摂取を推奨しています。
4.ストレスコントロール
乳ガンに罹患した多くの女性において、その疾患のリスクファクターが、精神的・情緒的ストレス(psychological and emotional stress)に起因すると考えられる。
Beliefs and perceptions about the causes of breast cancer: a case-control study
メディテーション、深呼吸、その他のストレス解消法を選ぶか、自分に効果のある何かを見つけて実践しなさい。私の同僚のDr. Elizabeth Bohamは、日々の感謝を実践すること(daily gratitude practices)が、自身のストレスに対処することを助け、乳ガンからの回復に大いに役立ったと言っている。
How Gratitude Saved My Life
5.腸の健康を回復させる
Cleveland Clinicの研究者たちは、腸内細菌叢(gut microflora)が、ガン遺伝子(cancer genes)と自身の免疫システム(immune system)に影響を与えることを発見した。
Cleveland Clinic Researchers Find Link Between Bacterial Imbalances and Breast Cancer
食物繊維(fiber)[腸内の有用な細菌を選択的に増殖させ、有害な細菌の増殖を抑制するプレバイオティクス(prebiotics)]や、プロバイオティクス(probiotics)[腸内細菌叢のバランスを改善することによって健康に好影響を与える乳酸菌、ビフィズス菌などの微生物菌体]に加えて、腸をサポートする食品である発酵食品(fermented foods)も摂るようにしよう。もし、リーキーガット(leaky gut)やIBSのような腸の問題が疑われるなら、機能性医学(Functional Medicine)を実践している医師に相談して、その根本原因(root cause)を明らかにしよう。
リーキーガット:学術用語としては、「腸の透過性の増大(increased intestinal permeability)」がよく使われているようです。奈良県立医科大学 福井博氏の論文
Increased Intestinal Permeability and Decreased Barrier Function: Does It Really Influence the Risk of Inflammation? のKey Messagesが、この問題の所在をよく伝えているように思われましたので、以下に訳出しておきます。
「直接の因果関係は確認されていないが、様々な疾患の炎症性変化(inflammatory changes of various diseases)において、腸の過透過性(intestinal hyperpermeability)が重要であることを、すべての臨床および実験データが示唆している。腸の透過性の増大(increased intestinal permeability)が、病気の予防と治療(disease prevention and therapy)の新しいターゲットである。
”リーキーガット”および腸内毒素症(gut dysbiosis)が、主要な病気(the major diseases)と密接に関連していることを考えれば、 細心の(meticulous)栄養およびプロバイオティックの面からのアプローチ(dietetic and probiotic approaches)により健康な微生物叢(healthy microbiota)を回復することが、将来これらの病気管理において突破口を開く可能性があると言える。」
IBS(過敏性腸症候群:Irritable Bowl Syndrome)は、大腸の慢性的な症状で、腹痛、筋痙攣、腹部膨満、過剰なガス、下痢、便秘、あるいはその両方などです。幾つかの要因が関与していることは推定されていますが、正確な原因については不明とされています。
Irritable Bowel Syndrome
6.毒性物質の負荷を減らす
水は浄水器を通し、食品はオーガニックのものを選ぶようにしよう。天然のサケ(wild salmon)やグラスフェッドビーフ(grass-fed beef)のような良質の動物性食品(high-quality animal sources)を常に摂るようにしよう。
家庭用洗浄剤(household cleaners)や化粧品(cosmetics)のようなものが、いかにして毒性物質の負荷(toxic load)を増加させ得るかもっと意識しよう。こっそりと隠された化学物質(sneaky hidden chemicals)は、体にあらゆるダメージを与えうるものだ。
「天然のサケ」:まず「天然の」ということですが、養殖の魚は、配合飼料の原料、水産用医薬品(抗生物質を含む抗菌剤、駆虫剤、消毒剤、ワクチンなど)の投与、環境(飼育密度)などが問題であるとみているのでしょう。
「サケ」は、米国でよく食される魚の中で水銀の蓄積が少ないこと、また毒性に関連することではありませんがオメガ3脂肪酸であるEPA・DHAが豊富に含まれていることから良質の動物性食品として取り上げたのだと思います。
我々は高価な「天然のサケ」に頼らなくても、水銀の蓄積が少なくオメガ3脂肪酸の豊富なイワシ(通常は天然)が容易に入手できます。
厚生労働省の 魚介類に含まれる水銀の調査結果 によれば、総水銀の平均値は、イワシが0.018μg/g、サケが0.027μg/g、サバが0.104μg/gです。水銀の蓄積が多いので避けた方が良いと言われているマグロ類は0.437μg/g、クロマグロ(本マグロ)は0.723μg/gとなっています。
「グラスフェッドビーフ」:牧草飼育牛の肉のことです。国産や米国産の牛肉のほとんどはグレインフェッドビーフ(穀物飼育牛の肉)ですが、その穀物飼料として使われるトウモロコシや大豆は、多くの場合、遺伝子組み換えにより除草剤耐性を持たせて除草剤を直接散布している可能性があります。
関連記事 除草剤と遺伝子組み換え作物
また、本来は草食である牛を穀物飼料で育成すること、および多くの場合に牛舎内であまり運動させない環境であることに起因する病気を防ぐために、抗生物質の投与が行われています。成長を早めるために肥育ホルモンを与えていることもあると言われています。
Chris Kresser氏 は、グラスフェッドビーフが通常のグレインフェッドビーフに較べて優れている点として
・オメガ3脂肪酸比率が高い、CLA(共役リノール酸)が多いなど、脂肪酸組成が優れている
・毒性物質、特に殺虫剤の含有が少ない
・残留抗生物質と薬物耐性菌を含む可能性が低い
・ビタミンEのような栄養素の含有量が多い
を挙げています。
肉だけでなく、バターやチーズなどの乳製品もグラスフェッドが望ましいことは言うまでもありません。
[平飼いの鶏肉および卵]Dr. Hymanはここでは触れていませんが、同様の趣旨で、鶏肉や卵を選ぶなら、平飼いで無投薬のものが推奨されます。
7.定期的なエクササイズ
定期的なエクササイズ(regular exercise)によって乳ガンのリスクが低くなることを調査が示している。
Breast Cancer and the Role of Exercise in Women
エクササイズはインシュリン抵抗性を改善し、エストロゲンのバランスを取るのを助け、健康な体重を維持させる。
エクササイズとして、自宅でも簡単にできて様々な効果が期待できる ゆる体操 がお勧めです。
また、屋外でのウオーキングは、日に当たることによるビタミンDの産生やよい睡眠を促すという効果も得られます。
8.良好な睡眠
睡眠時間(sleep duration)と乳ガンのリスクの間に、逆の相関(inverse association)があることを調査が示している。
Sleep Duration and Breast Cancer: A Prospective Cohort Study
毎晩、8時間の、良質の途切れのない睡眠(quality, uninterrupted sleep)を取るようにしよう。
ピッタリ8時間の睡眠時間というわけではありません。我々は寝ているとき、ノンレム睡眠とレム睡眠からなる睡眠周期を繰り返します。この睡眠周期を5回とるのが望ましいとされており、周期の平均的な長さは90分ですので、5回だと平均7時間半の睡眠時間となります。睡眠周期は個人差がありますので、睡眠時間もそれによって多少長短します。
私の、よい睡眠をとるためのヒント(sleep tips)は次のサイトで見ることができる。
Sweet Dreams: How to Sleep Better, Lose Weight, and Live Longer
Dr. Hymanのよい睡眠をとるためのヒントで参考になるものを紹介します。
・規則正しい睡眠のリズムを守る
毎日同じ時刻に起床し、就寝する。
[我々は睡眠のサーカディアンリズムを持っています。多くの人は夜の10時から11時の間にメラトニンを分泌して眠たくなります。]・よい睡眠を促す美的環境を作る
落ち着いて気の休まる色調にする、散らかったものは片付ける。・寝るときは部屋を真っ暗にし、静粛な環境にする
難しいときはアイマスクや耳栓の使用を検討する。・寝床で本を読んだり、テレビを見たり、[スマートフォンを操作したり]しない
寝床は睡眠と”ロマンス”のためだけに。
[ブルーライトが眼に入るとメラトニンの生成が阻害され、眠りにつくのが妨げられます。]・毎日20分以上は昼の光にあたる
太陽からの光が目に入ると、メラトニンのようなホルモンや特定の化学物質が脳で分泌されるが、それらはよい睡眠や気分に不可欠である。
[特に朝、直射日光を浴びるとサーカディアン時計がリセットされるので、一貫した睡眠のリズムを保つのに有効です。]・就寝前3時間以降は食物を摂らない
寝る前に重い食事をすると睡眠の質が悪くなる。・カフェインを避ける
[コーヒーを飲むなということではなく、午後の遅い時間以降はコーヒーを飲まないということでしょう。摂取したカフェインが体内で半減するのに8〜10時間かかると言われています。したがって午後2時以降はカフェインを含む薬やドリンクを摂取しないことが推奨されています。栄養ドリンクやエネルギードリンクはカフェインを含むものが多いので要注意です。]・アルコールを避ける
アルコールによって寝付きは良くなるかもしれないが、睡眠の中断や質の低下をもたらす。
[アルコールを摂取する場合は、良い睡眠という観点からは就寝の3時間前までと言われています。脳に対する悪影響を考慮すると、1日あたりの許容量はワインにして1杯(女性)〜2杯(男性)とも言われています。]・睡眠を妨げる薬を避ける
不眠症(insomnia)に対して使用される鎮静剤(sedatives)は、最終的には、依存症、および正常な睡眠のリズムと仕組みの混乱(disruption of normal sleep rhythms and architecture)をもたらす。
また、抗ヒスタミン剤(antihistamines)、興奮剤(stimulants)、風邪薬(cold medications)、ステロイド(steroids)、カフェインを含む頭痛薬を避ける。[これらの薬の睡眠に及ぼす影響は個人差があります。薬を服用する場合はその必要性および効果と、睡眠に及ぼす悪影響の両面から慎重に検討することが必要でしょう。Drug- and Alcohol-Related Sleep Problems ]・夕食後は激しい運動をしない
激しい運動は体を興奮させて寝付きを悪くする。・入浴
寝る前に体温を上げると眠りにつきやすい。また風呂は筋肉や精神的な緊張を緩めてくれる。風呂にエプソムソルト[硫酸マグネシウム:アマゾンなどで購入できます]と、ベーキングソーダ[重曹]を加えると、肌からマグネシウムが吸収され、ベーキングソーダによってアルカリバランスが取れるが、どちらもよい睡眠を助ける。
[足湯器もよいかもしれません。]・就寝前に体をマッサージしたりストレッチを行う
体をリラックスさせて眠りにつきやすくなる。・胴体部分を温かくする
内臓などの深部体温を上げて睡眠に適切な化学反応を誘発する。お湯を入れたボトルやヒーティングパッドを使うのも一案である。・気にかかる事を書き出す
就寝の1時間前に心配になっている事柄や明日やらなければならない事項を書き出して、気にかかることを減らす。これによって意識状態が解放され、深くて安らかな睡眠に向かいやすくなる。・リラクゼーションや瞑想を誘うCDを試してみる